第二部:ゴッホの『種蒔く人』

 

 

 

 

 

 さて、話は第二部に入ります。前半で、ミレーの『種蒔く人』の話をしましたが、実を言うと、この話はここで終わりではありません。

 というのは、ミレーの『種蒔く人』の意味はわかったけれど、なぜゴッホはあのような『夕日と種蒔く人』を書いたのでしょうか。

 そこにも、おもしろい逸話があります。それをお話しします。


 実はゴッホは『種蒔く人』を10枚以上描いています。初めはミレーの物まねでした。天才画家ミレーと自分との比較でした。


 ゴッホは、子どもの頃から激しい性格でした。また、コンプレックスの塊でした。

 その原因の一つは、兄との比較です。父がいつも自分と兄を比べる。しかも、その兄とは、前年の同月同日に生まれ、すぐに死にました。つまり、死んでしまって存在しない兄との競争、兄の複製、兄の2号を生きる運命を背負わされたのです。

 だから、いつも、何をしても、物まね。自分は死んだ兄の物まねでしかない。だから自分のオリジナル、自分らしさが見つからない。見つけられないのです。後で見ますが、これがゴッホを同じテーマにとりつかせる理由です。

 また、ヴィンセント家は代々、牧師になるか画商になるか、それが一家の誉れ・出世でした。そのプレッシャーにゴッホは翻弄されました。牧師になるか画商になるかの間で揺れ動いていたのです。

 ここでゴッホの人生を顧みてみましょう。
○→お手元の年表をご覧下さい。


 さて、次に、ゴッホの絵について話しましょう。

 ゴッホは同じテーマにこだわります。同じテーマを何度も描き続けます。それは自画像・ひまわり・糸杉・跳ね橋・麦畑・種蒔く人と。自分の好きなテーマをみつけるとそれを何度も何度も描きます。

○→ゴッホの有名な作品を見てみましょう。


 話を元に戻して、ゴッホの『種蒔く人』について話します。

 ゴッホが『種蒔く人』を描き始めたのは、1880年27歳の時です。それから亡くなる年、1890年37歳まで10年間、この絵を描き続けます。追求します。

 そしてついに、ゴッホは、最後の最後に自分だけの、独自の『種蒔く人』を描くことができました。天才画家ゴッホの誕生です。

ゴッホの『種蒔く人』をもう一度じっくりと見ましょう。
○→10枚


 最後に、おすすめをさせて下さい。私たちは、神に創られ、愛されているのだから、他者との比較も競争もいりません。大切なのは自分らしく生きることです。自分に与えられた良い土地を真剣に生き抜くことです。ゴッホの人生を通して、そのことを、本日学びました。

 ここから学ぶことは、人が生きるためには、比較も競争も不要だということです。私たちは一人ひとりみな「良い土地」なのです。
 それぞれに与えられている神の言葉に耳を傾け、一人一人に与えられている才能の種を豊かに育んでいきましょう。自分なりに、自分らしく、のびのびとと生きていけばいいのです。